この間、田中区長は"自分が区長となり、認可保育園増設に取り組んだ"と主張してきました。
田中区政となり3年目を迎えるなかで、その主張が事実に基づくものなのかどうか、独自に検証してみることにしました。
前山田区長時代に、現在の保育待機児童児問題の土台が築かれることになった
党区議団は、前山田区長時代から一貫して、認可保育園の増設により保育待機児童を解消することを求め続けてきました。
しかし、前区長は認可保育園の増設には極めて消極的であり、整備が進まず、認可外保育所や暫定的な区立保育室の設置などの臨時的な対応が続けられてきました。
前区長時代の晩年は、都段階での認可保育園増設の機運の高まりもあり、不充分ではありましたが、認可保育所分園の新設が計画化(3園)されることにもなりました。
そもそも「認可」保育園の基準にこだわる理由
党区議団は、この間も、一貫して、認可保育所の増設により、待機児童を解消することを求め続けてきました。
現在の「認可基準」は、先進諸国の中では大変遅れた内容となっています。"子どもの命を守り、安全に過ごす"最低限の基準として、現行基準を守り、発展させることが必要になっています。
また、認可外保育施設について、認可保育園に入れない待機児童が増えているもとで、認証保育所や小規模保育所の補完的役割を否定するものでありません。
しかし、これらの保育所の基準は認可より低いうえ、規模も小さいものです。
そのため、多くの保護者は、子どもの命と安全を考え、認可保育園に子どもを預けたいと切望しています。
前区長とは違う!?田中区長の「認可保育園増設を柱」とする姿勢への期待
前山田区長から田中区長に変わり、田中区長は"認可保育園の増設を柱とする"保育待機児童解消を表明しました。
区長の姿勢は、党区議団の主張と重なる部分もあり、一定評価できるものでした。
2年前、私が議員になった際、「認可保育所の増設で待機児童の解消を求める」区長申し入れを行なった際、区長は"認可の必要性は理解している""場所を探すから待ってほしい"との明確な答弁を行ない、私も期待を持ちました。
区長の姿勢にブレが生じ始める...
当初、田中区長一年目の認可保育所増設計画(H23年度)には、区長独自の明確な増設計画は示されませんでした。
前区長と交代し、半年しか経過していなかったため、前区長からの施策の変更点なども発生するため、予算編成上も一定の制限を受けることになります。
党区議団も、予算編成上の制限も考慮に入れ、今後の認可保育園整備計画の拡充を求めてきました。
保育分野に関しては、前区長時代に計画化した
「上水保育園清水分園(56名定員)」
「杉並ゆりかご保育園のはら分園(34名)」
「杉並の家保育園浜田山第二分園(35名)」
が開設し、新設認可保育園の定員は合計125名となりました。
区長二年目の認可増設計画(H24年度)には、
「井草地域に新設予定の110名規模の企業経営の認可保育園増設計画」
が示されました。
また、区立保育室から認可保育園への転園(ピノキオ幼児舎桃井※1)が行なわれました。※1区立保育室からの転換となり、実質定員増(17名)
しかし、H24年度の認可増設計画の柱となるはずだった井草地域の認可保育所増設計画は土地の確保が進まず、とん挫するという事態が発生(これまでのニュースを参照のこと)。
計画の進捗状況を掴んでこなかった区行政は、当てにしていた110名もの規模の認可定員を失うことにもなり、認可保育園の増設は大幅に遅れました。
そして、現在の区長三年目の認可増設計画は、
「西荻南に新設された認可保育所(80名)」※2
「上高井戸の新設認可園(96名)」※3
「井草地域の新設認可園(60名)」※4
※2 既に今年4月入園の募集要項に含まれており、来年度・4月以降の純増分にはならない。
※3 公立上高井戸保育園の7月閉園(-41名)に伴う代替施設となり、実際の増加分は(55名)
※4 昨年10月の110名規模の認可計画が頓挫した保育所の代替策。本来であれば、昨年増えていなければならなかった定員増。
認可増設は3園が予定されましたが、今までの遅れを補うものに過ぎず、大幅な認可増設とは言えないものでした。
さらに、およそ50名弱が、施設改築・改修などの定員弾力化での対応であることも問題です。
このような状況を踏まえれば、この間"認可保育園の増設を柱"とした田中区長の保育待機児童解消が適切に行なわれてこなかったことを示しています。
認可保育園(特に認可基準)への苛立ちが垣間見える...
先日、行なわれた区長の記者会見では、記者の質問に対し、区長は「認可一辺倒で凝り固まっていたらですね、時代おくれ、かつ自治体的でない、現実的でない、解決できない」というような会見を行ないました。
これまで"認可保育園の増設を柱"としてきたのにも関わらず、認可基準に対する苛立ちも見せ始めています。
その後に行なわれた総務財政委員会では"認可基準に迷惑している""認可外のイメージを脱法ドラッグのように悪く見せている"など、これまでの自身の姿勢を覆すような発言までしています。
認可保育園の増設が進んでこなかったのは区行政の責任
そもそも、これまで認可保育園の増設が進んでこなかった理由として、
①国公有地の活用を適切に進めてこなかった
②安心こども基金(建設助成)を活用しての認可保育園増設(企業経営を除く)を進めてこなかった。
などの問題が挙げられます。
認可保育園増設を民間に丸投げし、土地・建物込みでの公募を行なってきた結果、認可保育園増設計画をとん挫させることにも繋がりました。
これまでの総括と反省に立ち、本腰を入れた認可保育園の増設を!
区長は、認可基準を敵視するのではなく、基準の重要性を理解し、これまでの認可保育所増設の方法を見直すことが必要です。
世田谷区で行なわれているような国・都有地の活用や、運営法人は企業経営ではなく非営利事業者にするなど、他地域の先進事例に学ぶ姿勢が重要です。
今、多くの保護者の願いである認可保育所の増設こそが求められており、田中区長のさらなる決断を求めます。
コメントする